この記事を書いている2025年12月から遡ること8年前。会社の健康診断で「甲状腺に異状あり」の指摘を受けました。
検査のきっかけの詳しくは忘れてしまったけれど、オプションで甲状腺エコー検査を受診していた…だったかもしれません。
その後専門医院を受診して検査(細胞診)して、「甲状腺乳頭がん」と診断されたのですが、それからしばらくは経過観察のみで過ごしていました。
ところが、8年経っていよいよ手術を決断したのです。
あくまでも私個人の闘病の記録とはなりますが、同じような状況の人に参考にしてもらえたら…と顛末を書くこととしました。
なぜ、しばらく経過観察にしていたのか?
まず、なぜ経過観察にしていたのか?について。
細胞診の結果、甲状腺の左右それぞれに10mm弱の悪性腫瘍と思われる所見がある、とのこと。
その時に「治療法は手術(甲状腺摘出)のみです」と医師から言われました。
全く症状もありません。
身体の内臓の一部が無くなってしまうことにかなりの抵抗感があって、色々と調べてみたら「甲状腺乳頭がんは比較的大人しいがんで、10mm弱であれば経過観察でも良い場合も多い」との記事を見たのと、他の病院にセカンドオピニオンを取りに行って「最終的に決めるのは患者さんご本人です」と言われて決めたのです。
このままにしておこう。と。
ただし、半年毎に受診するようにとのアドバイスでしたので、その後元の病院(東京都内にある「伊藤病院」という甲状腺の専門病院)で半年毎にエコー検査と診察をしてもらっていました。
毎回腫瘍の大きさを測るのですが、相変わらず10mm以下、時には小さくなってる?みたいなこともあったりして。
3年程経った時に、リンパ節にも所見があるとも言われましたが、大したことないだろうと思ってそのまま8年が経っていったのです。
手術を決断した理由
その後、2024年に胃がんに罹り、幸い初期だったので内視鏡での手術で済んだのですが、そのことを甲状腺の主治医に伝えたところ「甲状腺がんが胃がんに転移する…とかその逆とか、そういう因果関係は一般的には無いけれど、念のため、あらためて細胞診をしましょう」と言われました。
すると。
甲状腺の奥にあるリンパ節にあらためて転移が認められる(甲状腺がんは他の臓器に転移することはさほど症例が無いようですが、リンパ節転移はよくあるらしい)とのこと。
主治医から「そろそろ手術する時期かと。このまま放置しておくのは勧めません」といつもは穏やかで優しめの先生から、結構キツく言われたのです。
左右に腫瘍があるので甲状腺を全摘出しなければなりませんが「内臓の一部が無くなる」ことよりも、ここで愚図愚図していて、万が一手遅れになったら一生後悔する。と思い手術を決断しました。
転院先での手術
手術するならば傷跡がより少ない内視鏡術を選択したいと思っていたのですが、伊藤病院では内視鏡での手術を行なっていないとのことで、東京都内で内視鏡術をやっている「日本医科大学病院」※2025年12月現在
への紹介状を書いてもらって、転院の上手術をお願いすることにしました。
実は、以前にセカンドオピニオンを取ったのもこの病院で、馴染みがあったことも決め手です。
ところが。
診察してもらった先生から「内視鏡よりも外科手術の方が手術時間が早く済みますよ」と言われて、ならば外科手術で仕方ない、とさらに腹を括りました。
説明を受けた際の資料。左側が外科手術(通常法)、右側が内視鏡術(VANS法)です。

入院は7日間
その後、他の患者さんの体験ブログをネット検索して色々と読んでみて、切った直後は痛そうでイヤだなぁ…などとついビクビクしてしまいましたが、仕方ない。
傷痕が薄くなっていくのには数ヶ月かかるようですが、予後はさほど大変じゃなくてデスクワークであれば、退院後にすぐに仕事に戻る人も多いとのこと。
そして、この病院は入院後3日目をオペ日と定めていて、入院は水曜日から翌火曜日までの7日間、手術は金曜日となりました。
入院前に、各日毎の「クリニカルパス」をもらって、目を通しておきます。入院生活あらましの理解に役立ちました。

入院1、2日目
入院初日と2日目。主治医からの手術詳細説明と麻酔科医からの全身麻酔の説明と歯のぐらつきチェック、各同意説明文書への署名以外特にやることもなく、普通に食べてシャワーも浴びて”ひたすら待機”です。
なんだか”まな板の鯉”な心境(笑)
少々金額はかかりますが、個室がやはり落ち着くので、胃がんの時と同様今回も個室にしました。
日頃溜まっていた調べ物をしたり企画書の作成など、ひたすらパソコン作業に取り組むことができて、まあ、それはそれで良しとしましょう。

消灯は21時…と早いのでその後の作業や音声アプリ(LINEオプチャライブやclubhouse)を楽しむことも諦めて、就寝します。
入院3日目・手術当日
手術当日は朝から飲み食いできず、起きて術衣の浴衣に着替えて看護師さんがお迎えに来てくれるのを待ちます。
あと、血栓防止のために「弾性ストッキング」も着用。これは術後翌日まで履いていました。
手術時間は朝9時からです。
手術室に入って若干の説明を受けたのちに全身麻酔が始まって、もうあとは意識不明。看護師さんの「終わりましたよ」の声で目が覚めました。12時頃でしたので、3時間ほどかかったことになります。
その後病室に戻ってひたすらベットの上で寝て過ごしますが、1時間毎に看護師さんが様子を聞きに来てくれて血圧と体温を測ります。まだ麻酔が残っているせいかさほど痛みは感じず、ひたすら爆睡。
いっとき熱が37℃台前半まで上がりましたが程なく下がり、それ以外に事前に説明されていた後遺症(声のかすれ、嚥下障害、手足や唇の痺れなど)は特に起こらずに済みました。
夕方6時になって、酸素マスクが外れて少量の飲水。飲み込む時に多少の痛みはありましたが、それ以外には特に問題なく以後は水は飲んでOK。食事はこの日は摂れずです。
写真ように、斜めに”たすき掛け”になっているのは、ドレーンのポンプを下げている紐。ドレーンとは手術後などに体内に溜まった血液、リンパ液、膿、浸出液、空気などの液体やガスを体外に排出するための管です。
左右に一つずつ留置。左側のは翌日に抜去してもらいましたが、右側のは術後3日まで付けていました。

これが取れないとシャワーに入れないので、残念ながら3日ほどは我慢。
引き続き「喉の痛み」はさほど感じずに済みましたが、ずっと寝ていたので夜になったら寝れなくなってしまい、また寝過ぎたせいか腰が痛くて、それが辛かったです。
入院4日目・手術翌日
手術当日は点滴をつけっぱなしでしたが、翌日の朝に一旦終了。
ベッドからは出てなるべく動くようにと言われましたので、病室内を歩いたり軽くストレッチをしたり、寝ないで机に座るようにして、パソコン作業も再開です。
その後、痛みや吐き気などがあれば点滴を追加してくれるとのことでしたが、特にそうしたこともなく、夕方には手のひらに刺していた点滴の針も抜いてもらいました。
甲状腺のすぐ後ろには「反回神経」があり、声帯の動きを制御し、発声や嚥下(えんげ)に重要な役割を果たす神経で、甲状腺手術の際に損傷リスクがあるとのことで、耳鼻科で検査をしてもらいました。鼻からカメラを入れるのですが、チト痛い。多少声の掠れはあるものの、おかげさまで特に問題なしでホッと一安心です。
一方で、唾を飲み込んだり飲食の際にも「ごくん」とする時の喉の痛みは前日より増してきて、風邪ひいて喉が腫れてしまった時の感じ。
また、ベッドに寝たり起きたりの際の動作も首に力が入るため、手すりを使わないと痛くてままならない状況もあります。
この日の3食はお粥。おかずも柔らかいものがメインでしたが、あまり食欲もなくて残念。
昼間はずっと起きていたので、夜はぐっすりと眠れました。
入院5、6日目
5日目になって、喉の痛みは多少軽減。主治医の先生が朝来てくれましたが「順調ですよ」と言ってもらってホッと一安心です。
食事は普通食に戻り、食欲もいつも通りになりました。
痰が絡んでで風邪を引いた時のように咳き込むことも1日のうちに何度か起こるのですが、麻酔の管を入れていたことで痰が溜まってしまっていることから、とのことです。これは数日続きました。
6日目に右側のドレーンがやっと抜けて、手術痕がこんな感じ。テープで固定してあるところの上も少し内出血してしまっていますが、テープはずっと剥がさないように、そして、3日ぶりにシャワーを浴びて洗髪もできてスッキリです。

7日目、退院
ドレーンが抜けた翌日に問題なければ退院となりますよ、と聞いていたのですが、おかげさまで無事退院ができました。
病室と通路を隔てる扉のところまで、看護師さんが見送ってくれて「一区切りついたんだな」と感慨深かったです。

当日は冬の青空。病院エントランス前を撮影、1週間お世話になりました。

退院後の生活について
悪性腫瘍で外科手術して…となると、一見、予後も大変そうな印象があるかもしれませんが、退院後は至って平常通りの生活に戻って良いようで、嬉しいやら拍子抜けするやら(笑)
あえて言うならば、車の運転は2週間後、美容院での洗髪は1ヶ月後(特にシャンプー時に首を後ろにそらす動作がよろしくない)といった制限がある程度。

医学の目覚ましい進歩、はたまた、日常生活に戻ることが免疫向上にも効果があるのか、もしくは、この疾患(甲状腺乳頭がん)の特性なのか、色々状況はあるかもしれませんが、こうして「意外とスンナリ元通りにできる」ことは、本当にありがたい。
甲状腺が消失してしまったので、その機能を補うための薬(チラージン)は一生飲み続けなければならないのと、10年程の経過観察が必要のようですが、現時点ではそれ以外には特に必要なことがありません。
とりあえず、退院後の次の受診は約1ヶ月後。
また今後の経過をこのブログでもお伝えしていきます。



