私は仕事上で、人に何かを教えるのがあまり得意ではありません。古臭い言い回しで恐縮ですが「背中を見て覚えてねー」的に後輩や部下さんたちと対峙してしまっていることしきり。
加えて、長年同じ業務を行っていたため、「誰かに何かを教える」という行動があまり発生しない日々でした。
しかし、仕事というのは変化がつきもの。今後また、教える場面がやってくるかもしれない。ならば、教え方についてあらためて学んでみたい。と本書を手にとりました。
著者の佐々木恵さんは、勉強嫌い専門プロ家庭教師。その生徒さんたちが「第一志望校合格率5年連続100%、成績アップ率100%」の成果を出されている、素晴らしい先生です。
「教える」とは、勉強でもビジネスでも同じ
もっとも気づきをいただけたのは、勉強を生徒さんに教えるのも、仕事上で後輩や部下に教えるのも、基本は同じ。
いわゆる「先生」と「上司」ってちょっと違うのかな?とそれまでは思っていました。
でも、教えるって結局はコミュニケーション。
本書では、佐々木さんの「プロとしての教えるコツ」をビジネスパーソン向けに応用した「佐々木メソッド」を惜しみなく披露してくれています。
佐々木メソッド
方法が適切でないと、せっかくの教えも無駄になってしまう。
最初の5章では、以下のポイントにそって、その方法を導いてくれます。
- 基礎知識
- スキルを教える
- 知識を教える
- クリエイティブを教える
- 教え上手は説明上手
とくに響いた点をお伝えさせていただきます。
インプットし過ぎ。相手のアウトプットとのバランスが取れない
たしかに自分の方法は一方的に教える(インプット)ばかりでした。受け手にアウトプットしてもらいつつ、インプットしてゆく。本文中にある「SOS(シンプル、アウトプット、スモールステップ)の法則」というキャッチフレーズがとても腑に落ちます。
また、相手の頭にスイッチを入れる方法は「説明の前に質問をなげかけること」。インプット⇔アウトプットなのですよね。
自分の知っていることは相手が知らないという前提で話を組み立てる。
早速試してみました。「こんなことも知らないのー?」という視点をはずすと、教え方も優しくなれます。
情報を3つに絞る。伝えたいことは3回繰り返す。
教えるということにおいても、まさに「3の法則」が大切。
ステップを細分化する。根拠を伝える。
この点はできるだけ心がけていたつもりでしたが、受け手がうまく進められていないときは、こうした点もさらに気を付けるようにしてみよっと。
そして、6章以降は相手に合わせた教え方のポイントを解説してくれます。
「やる気がないとみえても本当は成長したい。認められたい。良い人間関係を築きたい。と思っているもの。」
多くの「困ったひとたち」の指導をしてこられた佐々木さんならではのメッセージ。
私も「困ったひとたち」に出会うと、ともすると投げ槍りな教え方になりがちでした。これからは相手の「成長したいキモチ」を引き出せるように努めていこう。
「教える」とは、アウトプット。それによって相手が変わること
全編を通じて流れているメッセージ。それは、「教えるとは相手がそれによって行動して変わること。」
ともすると、一生懸命教えたツモリになってしまうのが常。
しかし、教えるとはアウトプット。
目的は、それによって相手の行動に変革をもたらすこと。
仕事上の指導育成だけでなく、ブログを書いている自分にとっても、あらためて刺さった!
また、教え方のコツのひとつとして、以下のようなフレーズにもハッとさせられました。
最初の一言(一文)で惹きつける
まさに「書くこと」にも通じる。教えるとは、情報発信でありコミュニケーションなのですよね。
色んな教える相手がいる
物事を教える相手とは、学校や職場だけでなく実にさまざま。
本書の裏表紙には下記のような例示がされていて、とても印象的です。
最後の章では、設問形式で「4つのタイプ」を知ることができ、それにあわせての指導方法をアドバイスしてくれます。
教師⇔生徒、上司⇔部下のみならず、部活や、子育てや、どのような「教える」にも役に立つことが満載。
「教える」って、人間が生きてゆくなかで何度も遭遇する大切なことなのですよね。
まとめ
教えるとはコミュニケーション。
相手や場面に合わせていろいろな切り口でそのコツを伝授してくれる、ありがたい一冊。
著者の佐々木さんは、実際の講義活動に加えて、運営サイト「勉強やる気ナビ」の情報発信でも、温かく生徒さんたちのサポートをされています。
本書には、これからの自分が仕事をして人に教えていくうえで、是非傍らに置いてお供になってほしい!
佐々木恵さん、素敵なご本をありがとうございました。