女性管理職として20年、これまで多くの部下と関わってきた私にとって、「部下のために良かれと思ってするアドバイス」は、リーダーとして大切な務めだと信じてきました。ときには厳しく、ときには寄り添いながら――部下の成長を支えるには、上司の助言が欠かせない。そう考えていました。
しかし、小倉広さんの『優れたリーダーはアドバイスしない』を読んで、その考えが「独りよがりな思い込みだったかもしれない」と、ハッとさせられました。
ご紹介します。
テーマは「共創型リーダー」としての在り方
アドバイスとは「よかれ」と思って伝えるもの。でも、どれだけ柔らかい言葉を選んでも、どれだけ配慮して伝えても――その裏には、「今のあなたのやり方は間違っている」「だから、こうすべきだ」という“否定”のメッセージが、うっすらと透けてしまう。そうした「暗在」するメッセージに、部下は敏感に反応し、時に傷つき、反発し、やがては無気力になってしまう。そんなリアルな構造に、深く頷かされました。
この本は、「問いかけ」をベースにしたマネジメントのスタンスを丁寧に解説してくれます。上司が「正解を知っている」前提を手放し、部下と同じ目線で「共に考える」。その過程で部下自身が答えを見つけ出し、自ら動き始める――そんな“共創型リーダー”としての在り方が、本書のテーマです。
「アドバイスしない」という一見逆説的な考え方の深いリアリティ
本書は、漫画や豊富な事例を交えながら解説されているので、文章も読みやすく、状況がすっと頭に入ってきます。
特に「部下との関係性に悩んでいる」「頑張ってアドバイスしているのに、なぜか響かない」と感じている方には、まさに刺さる内容だと思います。
著者である小倉広さんは、セミナー講師をはじめとして公認心理師としても多彩な講演やカウンセリングでご活躍されている方。
そんな小倉さんが、研修や現場で何万人ものリーダーと向き合ってきた経験から導き出したこの“アドバイスしない”という一見逆説的な考え方には、深いリアリティと説得力があります。
悩んでいる管理職のあなたへ「この本を読まなくてどうするの?」
この本は、部下にともすると「上から目線」になってしまいがちな管理職の方(もちろん、私自身も含めて)にこそ読んでほしい。
どう寄り添えば、彼らの力になれるのか。そのヒントが、宝物のようにたくさん詰まっています。
「変えたい」ではなく「変わりたい」と思ってもらえる関係性を築く。これからのマネジメントは、そんな対話型・共創型のリーダーシップが必要なのだと、改めて感じさせてもらいました。
「この本を読まなくてどうするの?」と心からオススメしたい一冊です。