“ミスをしない”…というタイトルから、そのためのHow to的なマニュアル本のイメージが思い浮かぶかもしれませんが、本書はそうではありません。
“ミスをしない”という切り口から、病気予防と良好なコンディショニングの維持を目指す。
そうした心がけや取り組みによって、脳のパフォーマンスを向上させる。脳は何歳になっても成長することができる。そのための、精神科医・樺沢紫苑先生ならではのガイドブックなのです。
ミスの原因となるものは以下の4点。
- 集中力の低下
- ワーキングメモリの低下
- 脳疲労
- 脳の老化
その原因を根本解決するために、脳科学根拠に基づいた行動習慣、というのは、脳の「4つのプロセス」。
- 入力
- 出力
- 思考
- 整理
このプロセスをより改善することによって、「ミスの根治療法」→「脳のパフォーマンス維持・向上」へと導くことができる。
これらをふまえて、各項目ごとにくわしい解説がされているのですが、私は以下の4つの項目がとくに心に響きました。
【未病】
病気になる手前の状態を「未病」という。この段階で気付いて対処することが重要。
そのためのインジケーターとなるのが、“ミス”である。
【ワーキングメモリを鍛える】
日頃からミスを防ぐためのキーとなるのが、「ワーキングメモリ」(脳の作業領域)のキャパシティである。
【アウトプットを変える】
仕事の9割はアウトプット。アウトプットをより改善すれば、脳のギアがさらに加速できる。
【自己洞察力】
日頃から自分の状態を見極める。「自己洞察力」を研ぎ澄ます。
”最近、ミスが増えているかも?”といった方々や、”ミスを予防してさらにパフォーマンスを向上していきたい”という方々、老若男女問わずぜひおすすめしたい一冊です。
未病
(気付き)
私たちの健康状態をあらわすものとして、健康or病気。この二択ではなく、4つのフェーズがある。
絶好調>健康>未病>病気
人間だれしもいつも絶好調なときばかりではありません。では、健康なのか未病なのか。この境目の見極め。その道標となってくれるのが、「ミス」という事象なのです。
ミスの程度にはさまざまありますが、コンディションが低下してくると脳内物質ノルアドレナリンも低下してゆく。いわゆる「脳疲労」の状態。
「ヒヤリ・ハット」の段階でセンサーを働かせて察知するためには、日頃、「脳疲労」に陥り易い場面を意識し、センサーが反応したら、回復に努めるようにすることが肝要です。
(実践)
「日頃の脳疲労に陥り易い場面」を意識してセンサーを研ぎ澄ます。
朝夕の通勤ラッシュのあわただしいときや、週の後半で疲労が貯まりがちなとき。スマホを使ってSNS投稿やブログの下書きに熱中しすぎているとき…etc.
実際につい最近もミスをしてしまいました。振り返ると、上記のいずれかの場面であったとまさに、本書にて指摘されているとおりです。これ以降は、そうした際に、より注意を払ってセンサーを研ぎ澄ますように意識しています。
ワーキングメモリを鍛える
(気付き)
脳の作業領域(ワーキングメモリ)を鍛える。
本文中の例えにある”必要台数があり次々と会計をこなしていくスーパーのレジ”のように、「脳内レジの台数」をより安定稼働させるようにしたい。
そのための方法は以下の9点であると示されています。
7時間以上睡眠、有酸素運動、自然のなかで体を動かす、読書、暗記学習にチャレンジ、暗算、ボードゲーム等の認知トレーニング、料理、マインドフルネス。
どれも身近ですぐに取り組めるものばかりです。
(実践)
9つそれぞれを取り組む機会をもつ
9つの方法のなかで、これまでにできていなかったものに取り組むようにしました。
・自然のなかで体を動かす→幸い勤務先の近くに海浜公園がありますので、なるべく昼休みは海沿いまで散歩に出るようにしました。
・暗算→なるべく電卓を使わないようにしました。
暗記学習、ボードゲーム等は今後チャレンジしてゆきます。
アウトプットを変える→”樺沢流TO DOリスト”の活用
(気付き)
その日に行うべきこと。これまでは何となく手帳に書いたりOutlookのスケジューラに入力して終わっていましたが、ともすると抜け漏れがあったりダラダラとこなしがちでした。
TO DOリストを書き、目の前に掲示しておく。書くことによって記憶にも刻まれ、掲示しておくことによって、何度も確認できる。つまり「記憶の復習」ができると、その効果が説明されています。
また、「次に何をしようかな」という思考の工数が節約できるので、その分のワーキングメモリを別のことに使えます。
これは紙であることがポイント。電子媒体ですとログインしてアクセスして…という余計な手間がかかります。
(実践)
“樺沢流TO DOリスト”は、まさに魔法のツール。
本書の特典でダウンロードできる”樺沢流TO DOリスト”を自分流にアレンジして早速使ってみました。
丁度、使用開始した日は業務と雑用がテンコ盛り。リストのおかげで定時で完了することができました。終わったtaskにびーっと赤線を引くのも楽しいものです。
自己洞察力
(気付き)
絶好調>健康>未病>病気
この、「健康状態の4つのフェーズ」について、今自分はどの状態にあるのかを認識すること。そして、状態によって対処をしてゆくことが病気予防につながる。
この点は、他人からはなかなか分からないものです。言い換えれば、他人から指摘を受けるようになったときは、もう時すでに遅しなのかもしれません。
実際、身近な家族や職場のメンバーたちに、残念ながらこうした状態が起きてしまっています。
だからこそ、自分で自分を洞察することがいかに大切であるか。あらためて身に沁みました。
自己洞察力を高めるためには「書くこと」に効果がある。
「書く」とは、とてもありがたいことなのですね。
(実践)
日頃の書きものによって、自己洞察力を上げる
・感謝日記を1日1エピソードでも書くようにしました。
・ブログを毎日1記事更新。
今後に向けての目標
本書を読んで学んだこと。それは、「ミスを無くせばQOL(Quality Of Life)がさらに上げられる」ということです。
現代社会のかかえている課題、ともいえるべき、メンタル疾患の増加。
私の会社でも同様です。
業務上様々に発生するミスについて、社内では「インシデント委員会」という機能があり、たまたま私もその委員の一人なのですが、月一回行われる定期的な会議では、起きた事象について侃々諤々することがメインになってしまっています。
そもそも、それが発生するに至った当事者の健康状態はどうだったのか。なにかサインがなかったのか。そんなこと、誰も気付きません。
委員会活動するならば、産業医とも連携しこうした課題に取り組んでいかねば、根本解決はしないのだと、あらためて気付きました。
自分自身のことはもちろんのこと、少しでも多くの人々に、ミスを防ぎ健康管理に役立ててもらいたい。
今後は、この本で得たことを、自分の家族や多くの会社の仲間たちにも伝えていきたいとあらたな目標をもちました。