“100歳上生きる”。私のブログのタイトルにもなっているこの目標の礎は、本書から授けていただきました。いわば、私のこれからの第二の人生に向けての”指南書”といえます。
冒頭、著者は、“日本語版への序文”として「ひとりひとりが、長寿化を“厄災”ではなく“恩恵”にするために、どのように人生を築くべきか導いていきたい。」と語りかけてくれます。
統計によると、日本の平均寿命は世界のトップに立っている。推計では2050年までに、日本の100歳以上人口は100万人を突破する見込み(総人口見込み約1億人のうち)である。
長寿化によって、人々の働き方や教育の在り方、結婚の時期や子育てのタイミングなど、社会のあらゆることに変化を余儀なくされる。
世界において長寿化の潮流の先頭を走っている日本は、先駆けてその現実を突きつけられることとなる。
ライフサイエンスの進化とともに、さらに平均寿命が伸びていくであろう今後。本書でご指南くださっている主なポイントとしては以下の点です。
- 100年人生に向けての経済(資金)計画
- 無形の資産(スキル、知識、仲間、健康)をいかに伸展させてゆくか?
- マルチステージ化:「教育→仕事→引退」といった3ステージから、4ステージ、5ステージへと多様化してゆくこと。
- 新しい時間の使い方
約400ページにも渡る読み応えのある書ではありますが、「定年後のセカンドライフをどうするか?」に直面している方々も、「まだまだ数十年先だよー。」という若い世代の方々にも、是非お薦めしたい一冊です。
心理学と経済学
上記のポイントを挙げられた前提として、
心理学と経済学。100年ライフが到来することの影響を理解するためには、両方の視点を統合する必要がある。よい人生を送りたければ、よく考えて計画を立て、金銭的要素と非金銭的要素、経済的要素と心理的要素、理性的要素と感情的要素のバランスをとることが必要となる。
と著者は解説されています。心理学を専門とするグラットン氏と、経済学を専門とするスコット氏の共著となっているのは、こうした経緯があるのだと納得です。
100年ライフへの資金計画
長寿化に対処するうえで、お金の問題以外にも重要なことがある。この点が著者の主張の一つでもありますが、とはいえ、やはり現実問題として、長く生きていくのに必要なお金という点は抜きにはできないです。
従来の3ステージのステップからステージの多様化が求められてくる点は後ほど触れるとし、まずはお金の問題として、本書では以下のような試算をされています。
固定収入(例:会社員)を65歳で引退とすると、
その後のセカンドライフに必要な資金は、最終所得の50%あればなんとか。
※公的年金受給を前提。
そのためには、固定収入時代に、毎年の10%程度を貯蓄しておく必要がある。
あくまでも一つの例示であり、パートナー(収入有無)や家族の人数などによっても異なるのですが、なかなか厳しい試算です。
著者は、悲観的になるのではなく、従来型の3ステージの方式から、マルチステージへと変化してゆくことによって、より、柔軟な家計を維持することが可能になる。と導いています。
貯蓄というのを今まではなんとなくしかしてきませんでした。あらためてもう少し計数化して進めていきたいとあらためて気づきました。
無形資産の伸展
一方、お金を稼ぐ目的は、それによって様々なものを得られることであり、ほとんどの人は、稼ぐこと自体が目的ではないと思います。
お金によって得られる様々なもの→無形の資産。
著者は、無形の資産そのものの価値に加え、有形の金銭的資産と相互に補完し合い、長く生産的な人生を送るためにキーとなる重要な要素であると指摘します。具体的には、
- 家庭
- 素晴らしい友人、多様な人的ネットワーク
- スキルと知識
- 肉体的・精神的健康
…といった点。どれもシンプルですが大切なこと。これらを資産として意識し、つねにアップデート&伸展を図っていくことが何より肝要だと説きます。人として何を大切にして何を守っていくのか。ということに通じるのですよね。
しかし、毎日の生活に流されてしまうと、意外と意識が薄れてしまいがちです。誰のものでもない、自分だけのオリジナルな唯一無二の無形資産。これからも大切に育んでいきたいとあらためて思いました。
マルチステージ化
本書ではこの点について、もっとも多くのページを割いて解説しています。
会社勤めを主とした観点とはなりますが、従来型LIFEとは、いわゆる、3.0ステージ(教育→仕事→引退)の形式。しかし、このパターンに形骸化してしまうと、100年ライフにおいては、貯蓄&無形資産への不十分さが発現してしまいがちになってしまう。
あらたなステージパターンとして以下のようなアイディアが呈されています。
- 3.5シナリオ:会社勤めの傍らで自分のもっているスキルを地域や学校現場における社会人教育に還元する、というもの。(会社勤めが終焉したとしても、この0.5工数分はフリーランスやコントラクトであれば、”定年”を気にせずに遂行できる。)
- 4.0シナリオ:ポートフォリオ型ステージ。得意分野のスキルをさらに際立たせるために、勤務の傍らでトレーニングプログラムを受講(自己投資)するなどし、得られた新たな資格を活かしてのさまざまな仕事や活動を同時に並行して行うこと(ポートフォリオ・ワーカー)を可能とし、4つ目のステージを果たすことができるもの。
- 5.0シナリオ:学校卒業後すぐさま職に就くことではなく、人生の探求(エクスプローラー)→起業→組織への所属→(途中で家庭に専念する時期もアリ)→独立→組織の経営ポジション…といった、5つ以上のステージ、ある意味、”キャリアのPDCAを回していく”というもの。
うーん。確かに理想としてはそうだし、実際にそのようなステージを実現している方々もいらっしゃいます。だけど、お国柄の事情もあるし、現実として誰でもできるという状況ではありません。
現在、日本の政府もさまざま模索している「働き方改革」に通じる点もあり、個人だけでなく企業や国の制度の多様化も必要ですよね。
とはいえ、極論すれば、一つのことにとらわれず、好きなこと、得意なことを同時進行で取り組んでいくことで、長い人生、やりがいも貢献も見いだせる。ということなのだと受け止めました。
新しい時間の使い方
長寿化で増えた時間をどのように過ごすか。人生をどのように組み立て、さまざまなステージを実現していく。ということに加えて、やはり、日々の時間の使い方。にもより意識を向けてゆくことが積み重ねになるものです。
そのために、著者からのメッセージは「レクリエーションではなく、リ・クリエーション」。なかなか上手いことを言います。
労働や家事などの必須時間を効率化し、増えた余暇時間を娯楽だけではなく、自己の再創造へと活用していけると良いというもの。時間術というのがことさら重要になってくるのですよね。長く生きることで創生された時間。大切に使っていかねば。
今日の一言
お金。無形の資産。多様化した働き方の実現。時間術。
まとめると、この四つがLIFE SHIFTのキーワードなんですよね。
いつか自分の命が尽きるときに、「やり切ったぞー」といえるように、これからもがんばろーっと。