今年もそろそろ、コートが必要な季節になってきました。
私が愛用している、バーバリーのトレンチコート。
母がヨーロッパ旅行でお土産に買って帰ってきてくれたのは、もう30年前のこと。
このコートに袖を通す度に、母とのこれまでを思い出します。
母の旅行
私の母は昭和7年生まれ。現在86歳です。
戦争経験者で、なおかつ、その実家はとても貧乏だったため、苦労話をよく聞かされたものです。
父と結婚して生活も安定し、三歳上の姉と私が二十歳を迎えて以降から、行ってみたかったという、ヨーロッパへの旅行を楽しむようになりました。
このコートは、ウイーンに行ったときに免税店でセールをしていたらしく、買って帰ってきてくれました。
私が社会人になって数年したころ。バーバーリーのコートを着て通勤できるのが、とても嬉しかったことを鮮明に覚えています。
母が一緒に旅を楽しんでいたお友達も、残念ながらほとんどすでに他界されてしまい、
当の母も高齢なので、もう、海外旅行に出かけることも無くなってしまいました。
実はニガテだった、我が母
私の母はとても気性が激しく、しかも、チョー、ブランド志向。かなりニガテでした。
小さいころから「我が道をゆく」という次女(私のことです)には、さまざま落胆していた様子。
一方、姉はとっても優等生。
母の期待を次々叶えて、自慢の娘だったのだと思います。
ですから、その姉にではなく、私にこのコートをくれたのは、何故だったのだろう?
あえていえば、姉は教員、私は会社員だったから…その程度の理由だったのかもしれません。
ただ、当時の私はそんなことは意に介さず。とにかくこのコートを着られるというのが、ウキウキでした。
そして、30年の時が経った
その後、毎年この季節が来る度にお世話になっているコート。
気付けばもう、30年になりました。
私にとって無くてはならない「冬の相棒」
本体はまだまだ丈夫ですが、ベルトはかなりボロボロ。ところどころ、革が剥げかかっています。
何十年経っても、ボロボロになっても、何故このコートが大好きなのだろう?
もしかしたらそれは、ニガテだった母のことが、ほんとうはとても好きだった…だからなのかもしれません。
自分も、もうかなりの年齢になって。
そんなふうに、やっと思えるようになりました。
今日の一言
今年もきっとお世話になるであろう、トレンチコート。
単なる洋服だけではない、さまざまな歴史を物語ってくれていることに。
おかげさまで健在な我が母が、楽しく過ごしたであろう、ウイーンの思い出に。
そして、母に。
感謝です。
せっかくだから。
100歳になっても、着続けていたいなー。