スマホは本当に便利なアイテムです。大人はもちろんのこと、小学生の子どもでも、すでに、スマホ世代になっているのだと思います。
便利に使うことよりも、子どもたちにスマホを持たせることは、インターネットを悪用した犯罪の餌食になるだけでなく、真のリスクは「子どもたちにとって、スマホを使うと学力が低下するという点にある」。本書では、この点を東北大学による膨大な調査結果により、科学的なその根拠を示すに至った、大変興味深いテーマをとりあげています。
“スマホ脳”子どもの認知機能に与えるその影響
調査によると、スマホで子どもたちが最も利用しているアプリは“LINE”だそうです。LINEのメッセージがくると、つい、すぐに既読とし、レスポンスしたくなっちゃうのですよね。例えば、家で必ず2時間自己学習している場合でも、スマホを1時間以上使用していたりすると、その学習効果が下がってしまう…という現象が起きているそうです。
脳科学の知見から推測できることが“前頭前野の低下”が引き起こされている、という可能性。前頭前野とは、物事を考えたり、感情をコントロールする力にとって、非常に重要な部分。スマホを使ってLINEやその他のアプリなどに興じていると、その後の30分~1時間ほどは、前頭前野が十分に働かない状態に陥ってしまうようです。なので、せっかく2時間以上の長時間勉強をしたとしても、ほとんど勉強しない子どもと同じ成績になってしまう、ということが起きうる。とっても勿体無いです。
とはいえ、スマホがあるからには、まったく使用せずにいることも困難なもの。その時間を1時間未満に抑えることができれば、そこに芽生える“自制心”の相乗効果もあり、上手にコントロールすることもできるようです。
学校現場での対策
こうした調査結果を東北大学はそれぞれの教育現場に啓蒙されているそうですが、例えば、兵庫県小野市では、生徒の主体的な話し合い活動などで、下記のような取り組みをされているようです。
- 夜10時には電源を切る。
- 一日の使用時間は1時間以内
- 危険なサイトを開いたりアプリをとったりしない。
- 人の悪口は絶対に書き込まない。
生徒が自分たちで考えたルールだからこそ、守ろうという意識につながる。とても大切なことです。
スマホ以外のメディアでは?
同様に、ゲームやテレビの視聴時間についても様々な調査を実施されています。ゲームやテレビにかかわっている時間の長さと、前頭前皮質や海馬などの脳組織の発達への影響について、MRI画像を使った解析でその究明を進めた結果、時間が長くなるにつれ、語彙力や言語的推理力などへのネガティブなインパクトが発現するという点に至ることが導びかれたようです。
そもそも、“脳のやる気スイッチ”とは?
上記の電子機器のかかわりについての調査結果とともに、本書では、そもそも、”脳のやる気スイッチってどこにあるの?”という点にも言及されています。
その、動機付けの分類として、
- 内発的動機付け―楽しいからやる、自分の成長が嬉しいからやる
- 外発的動機付け―他者からの報酬によって行動する(例:親に褒められたい…etc.)
という二点を挙げられていますが、やはり、前者のスイッチが重要なのですよね。しかし、親としてはともすると、後者の状況を作ってしまいがち…なかなか難しいものですが、できる限り子どもの内発的動機付けを支援できるように努めたいとあらためて思いました。
“健全な脳は健全な肉体に宿る”
その他、
- 笑顔はご褒美効果
- 自己肯定感を高められればよい。
- 朝食は大事(パンよりご飯のほうが成長にはより貢献してくれる)
- 睡眠も大事
- 習慣は生まれつきの能力にまさる。本を読む子ほど脳内ネットワークは伸びる
といった点も調査データをもとにそれぞれ示されています。
どれもシンプルなことですが、科学的根拠の裏付けというのは真に説得力があります。
こうした点を細部に渡り調査されているのは素晴らしいです。
気付き
では、大人は大丈夫なの?この点には本書では触れられていませんが、大人にとっても、より、自己管理が必要な電子機器とのかかわり。
電子機器のメリットはたくさんあると思いますが、そのデメリットも自分たちも意識しなければ。そのうえで、きちんと子どもたちにも伝えてあげたい。
これからますます進化していくであろう、IT社会と上手にお付き合いしていくべきこと。そして、脳のやる気スイッチの肝。あらためてたくさんの気付きをいただきました。
新書でとても読み易いだけでなく、その充実した内容に感銘。本書を教えていただいた師匠に感謝です。