ビジネス数学のご専門家、深沢真太郎さん。
「数学の楽しさを知って人生に大いに役立てゆこう」と、講演や著書などで伝授くださっています。
本書は「小説」というかたちで、そのメッセージを受け取ることができる。
「数学、論理」…に、ちょっとニガテ意識のあるド文系の私(笑)ですが、この小説を読んでいたら、なんだかワクワクしてきました。
『論理ガール』ストーリー
主人公は数学をこよなく愛する女子高生の詩織(論理ガール)と、論理よりも感情を大切にしている文系出身でホテルマンの翔太。
翔太が母校で講演を行ったことから2人は出会う。
その内容が全く論理的でないと、食ってかかってくる詩織。
物語は、翔太が発表した以下のアジェンダにそって、展開してゆきます。
- 人間関係
- お金
- 仕事
- 遊び
- 恋愛
- 未来
これらって、人生で大切なことばかり。翔太は自分の経験を織り交ぜつつスマートな講義で在校生たちの共感を呼んでいる模様。
しかし、そこに立ちはだかってきた、「論理ガール」の詩織。
「あなたのおっしゃったことは全部間違っています。」
は?どうしたんだこの高校生は。まるで翔太になったかのごとく、私もイラっとしちゃいます。
とまれ。
冷静になって考えてみると、詩織が言いたいのは、
何かを経験してこう思った。という「感想文」じゃなくって
こういう理屈があって、こうするといいと思えるから試してみて。という「アドバイス」を聴きたいのだ。
ということ。つまり、論理の伝授。
人に何かを伝えようとするとき。ともすると翔太のようになってしまいがちだと、ハッと気づかされました。
すると、ドンドン先を読みたくなってくる。
詩織と翔太の、最初は相容れない関係が調和してゆくストーリーにも引き込まれます。
とくに「人間関係」「仕事」「未来」の3つについて、気づいたことを交えてご紹介します。
人間関係
講演で翔太は「人間関係(友達)は多ければ多いほど良い」と話をします。
一方、詩織は「人数ではなく、関係性の深さと、共にいる時間の掛け算である」と反論。
詩織独特の計算を施すと、確かに後者の方が「人間関係度数」が上回る。
翔太のは「感覚」
詩織のは「論理」
なんだか女子高生に軽くあしらわれたような翔太も、妙に腹落ち。
人が人生を楽しむ方法の一つは”好きなこと”が共通している人と出会い、そして、その人たちとできるだけ”長い時間”を過ごすことが、人生の豊かさにつながると考えます。なぜなら、先ほどの計算(数学的モデル)により、その方が人間関係度数が高くなるためです。
ー詩織のセリフより引用
ふむふむ。
これが、「数学」なのですねー。
人間関係って、数より深さと長さが大切。私もだんだん腑に落ちてきました。
仕事
次に「仕事」のアジェンダで翔太が発表した内容は「仕事は高望みせずに普通にやっていれば、どうにかなる」
これも詩織の反発に合います。
仕事に疲れている大人たちを見ていると、仕事って何なのだろう?と思ってしまう。
仕事の満足度を決めるのは何なのですか?
高校生の詩織としては、翔太の「どうにかなる」というある意味適当な説明じゃなく、「大人にとって、仕事のやりがいとは?」ということを具体的に聴きたかったのかもしれません。
そこで、また2人の掛け合いが盛り上がります。
詩織にアレコレ質問されて翔太が導き出した「仕事のやりがい」
それは、
仕事がどれくらい好きか(好き度)とお客様のありがとうの数の相乗効果、つまり掛け算。
その後、もう少し複雑な議論が展開されてゆくのですが、そこは本文に譲るとして、
確かに私自身にとっても仕事のやりがいって、このとおりだとあらためて納得。
"数学で考える"ということが分かってきました。
未来
その他に「お金」「遊び」「恋愛」についても侃侃諤諤、ときには詩織の恋バナや孤独感(lonely)など…キュンとなるエピソードも織り交ぜながら、クライマックスへと進んでゆきます。
詩織とディスカッションしたことを活かして、翔太は仕事でさまざまな取り組みにチャレンジし、詩織は、論理だけが大切なのではなく、違う世界も見てみたいとの思いを胸に、海外の大学生活へと旅立つ。
それぞれに新たな未来が待っている。
最後の詩織のセリフとそれを受けて翔太が見出したこと。
本書でもっとも著者が伝えたかったことを象徴しているように思えました。
詩織「数学とは、人生を語り合うための最強の”言葉”。なぜなら、人生にたくさんの”ときめき”をもたらしてくれるから」
翔太「数学とは、人生や世の中を考える上で必要な言葉、ツール。それも極めて基本的で、世界中で使われている共通言語」
なんとなく…と、感覚で示すのではなく、数値的な根拠で示す。
だからこそ、普遍的にものごとを語ることができて、相手に理解してもらうことができるのだ。
つまり、"数学は学問ではなく人生の友"
これからはそんなふうに観てゆけるようにしよう。
なんだか私も2人の未来に思いを馳せつつ、ワクワクしてきました。
最後にひとこと
人生で大事なことに向き合うとき。さまざまな悩みや迷いが生じるものです。
そういうときこそ「数学で考える」
詩織と翔太のストーリーが教えてくれました。
著者の深沢真太郎さんにサインをしていただいたメッセージも、めっちゃ刺さった。
合わせてご紹介させていただきます。
『論理ガール』
とくに私のように「数字、論理」ってチョット苦手だわーという方々に…ぜひ、ご一読をおススメします。