東野圭吾原作の「新参者」。2010年にTBSの日曜劇場で放映されていたドラマ。
阿部寛さん演じる、日本橋署刑事「加賀恭一郎」の世界に惹き込まれました。
ドラマのあとに作成された映画二編。それぞれを観て、あることに気付いた。
どの作品にも普遍的に流れているテーマ。それは、「親子の葛藤と絆」なのです。
ドラマ「新参者」
警視庁捜査一課の刑事だった加賀が、日本橋の所轄署に赴任してきた。その経緯は、最初のドラマではなく、今回の本作で明かされます。
それはさておき。
日本橋のさまざま風流な文化と街並みの傍らで起こった、ある殺人事件を解明する加賀刑事。
このドラマでは、阿部寛さんとともに主役をつとめる三浦友和さんの演技が光っていました。
自営業の父(三浦友和)と、反発する息子。母が殺害されたことで、なおさらその溝は深まってしまう。
そして、刑事の加賀にも父との葛藤がある。
真犯人も、やはり、息子との葛藤と絆があった。
殺人事件という縦のテーマだけでなく、親子関係という横のテーマも丁寧に描かれていました。
麒麟の翼
ドラマのあとに、続編として作成された映画「麒麟の翼」
日本橋の中央にある、「麒麟の翼像」がストーリーの象徴として位置づけられています。事件を解決するのはやはり、加賀刑事。
主役をつとめる中井貴一さんの「苦難する父親像」に心震えました。
思春期の息子とまったくコミュニケーションがとれなくなっていた父(中井貴一)。
息子がある事件にかかわっていることに気付いた父は、それを解明すべくひとつずつ糸口を探ってゆく。その過程で殺害されてしまいます。
父が勤める会社で労務問題が発生していたこともその鍵の一つではあったものの、真相は、過去に息子がかかわったことに起因していた。
息子を思う父の気持ちが死後に届くことになる、悲しい物語です。
また、加賀の父はこの作品で病死に至り、加賀自身の思いも切なく描かれています。
祈りの幕が下りる時
そして、本作。主役は松嶋菜々子さんです。
新進気鋭の演出家(松嶋菜々子)にも、苦難の過去と家族との葛藤があった。
加賀が少年のときに失踪してしまった母とも繋がってくる。
三作品のファイナルにふさわしい壮絶なストーリーでした。
まとめ
ひとつひとつの原作では、こうした”一貫テーマ”までは感じとることができませんでしたが、ドラマと映画を通じて、あらためて、「家族の葛藤と絆」がすべてに流れていることに感動しました。
願わくば、ドラマのエンディングで流れていた、山下達郎さんの「街物語」が映画でも使われていたら嬉しかったなー。
「新参者」シリーズを演出している日本橋の街並み。
舞台は未だ江戸の風情が残る街東京日本橋・人形町。主題歌を書き下ろすにあたり原作を読んだ山下は、2日間に渡って日本橋・人形町界隈を自ら散策。山下達郎ならではの視点でドラマの世界観を感じ取り、楽曲を書き上げたという。
この切ない歌詞とメロディーがまさに、「親子の葛藤と絆」を秀逸に表してくれています。
映画「祈りの幕が下りる時」。ドラマ「新参者」からご覧になっている方も、本作で初めて、阿部寛さんの加賀恭一郎ワールドに触れる方も、ぜひお薦めします。